腰痛と呼吸の意外な関係。腰痛緩和のカギは横隔膜と呼吸にあり?

みなさんこんにちは!

上野(東上野)・稲荷町の整体院urokoBodyCareの魚住です。

さて今日は腰痛と呼吸の密接な関係性についてお伝えしていきます。

腰痛は日本人の生涯罹患率が60~80%以上ともいわれ、現代社会においてもっとも身近な症状の一つです。

湿布を貼る、マッサージに通う、コルセットを巻く。

こうした対処を繰り返しても、なかなか根本から改善しないという経験を持つ方は少なくないでしょう。

実は近年、腰痛の原因の一つとして「呼吸の機能低下」が注目されています。

「呼吸と腰痛が関係している?」と意外に思われるかもしれませんが、この二つは非常に深いところで関係がある事が分かってきています。

今回の記事では、上野・稲荷町の整体院urokoBodyCareの魚住が胸郭の動き、横隔膜の役割、そして呼吸筋の疲労という三つの切り口から、呼吸と腰痛の関係を解説します。

腰痛と大きく関係する横隔膜とは?

いきなりですが呼吸の主役は横隔膜です。

みなさんが焼肉で大好きなハラミですね(^^)/

横隔膜は胸腔と腹腔(横隔膜の上側と下側でイメージしてください)を隔てるドーム型の筋肉で、肋骨や腰椎に付着しています。

息を吸うとき横隔膜は収縮してお腹側に動き、肺が膨らむためのスペースをつくります。

息を吐くとき横隔膜は弛緩して元のドーム型に戻り、空気が押し出されます。

しかし横隔膜が注目されているのは、横隔膜の「呼吸運動」だけではありません。

Hodgesら(1997年)の研究によって、横隔膜は呼吸機能を持ちながら同時に腹圧を高め、背骨や体幹部の安定化・姿勢にも関与していることが明らかにされました。

腹圧が上昇すると腰の安定性が高まり、脊椎への過度な圧縮力を減少させることも報告されています(Hodges & Gandevia, 2000 ; Stokes et al., 2010)。

つまり横隔膜は、「空気を吸うための筋肉」であると同時に、「腰を守るための筋肉」でもあるわけです。

体幹の安定性を理解するうえで、コアスタビリティという概念が重要です。

コアとは腰椎を取り囲む筒状の構造であり、上側を横隔膜、前・両サイドを腹横筋、後側を多裂筋、底部を骨盤底筋群が構成しています。

これら四つの筋肉が協調して収縮することで腹圧が高まり、腰椎にかかるストレスが分散されます。

具体的には、腹圧が上昇することで脊椎周囲が内側から支えられ、椎間板や椎間関節にかかる過度な圧縮力が分散・軽減されます。

その結果、脊椎の圧縮力やストレスが低下し、腰痛のリスクが下がると考えられています。

Kolarら(2012年)は慢性腰痛患者を対象とした研究において、腰痛のない健常者と比較して横隔膜の機能が著しく低下していることを報告しています。

つまり横隔膜機能の低下が腰痛の発症や悪化の要因となり得る可能性があるということです。

さらに2025年のScientific Reports誌に掲載された研究では、腰の不安定性を持つ慢性腰痛患者は、不安定性のない慢性腰痛患者と比べて

荷重動作時の横隔膜可動域および横隔膜の厚みが有意に低下していたことがエコーにて確認されています。

次に胸郭の可動性という観点から考えてみましょう。

胸郭とは胸骨・肋骨・胸椎によって構成される骨格です。

息を吸うたびに拡張し、息を吐くたびに収縮します。

通常、吸気時には肋骨が前方・外側へ開き、同時に横隔膜が下降することで胸腔容積が広がります。

しかし長時間のデスクワークや猫背姿勢、ストレス、運動不足などによって胸郭の可動性が低下すると、肋骨が十分に動かなくなります。

すると横隔膜も本来の可動域で動けなくなり、その代償として首や肩の呼吸補助筋(胸鎖乳突筋・斜角筋・僧帽筋など)が過剰に使われます。

いわゆる「胸式呼吸」が固定化された状態です。

この代償呼吸パターンには二次的な問題もあります。

胸郭の可動性が低下すると、上体を捻る・前屈・後屈といった体幹の動作に制限が掛かります。

通常は胸椎で担うべき動きが出来ないことで腰椎にしわ寄せがきます。

胸椎の可動域が失われるぶん、腰椎が過剰に動かされ、繰り返しのストレスが腰に集中するのです。

胸郭と腰椎は解剖学的に連続しており、「動くべき部分が動かなければ、動いてはいけない部分が動く」というメカニズムが、慢性腰痛には隠されています。

また、横隔膜の機能低下を代償して脊柱起立筋の活動が増加すると、反り腰が増強される可能性があります。

腰椎前弯の増大は脊椎負荷をさらに高め、腰痛の悪化を招く可能性も研究で示唆されています(Kolar et al., 2012)。

また実際に私が腰痛の方の施術を行っていると胸郭の固さや深呼吸をしていただいた際に胸郭の動きがほとんど見られない方にしばしば遭遇します。

これは腰痛だけに限った事ではなく背中や肩などの症状にも影響します。

40代以降、胸郭は何もしなければ動きが失われる傾向にあり、現在ご来院の80代の方ではかなり肋骨が動きづらく、呼吸もしづらいと仰る方もいらっしゃいます。

呼吸筋の疲労という観点も見逃せません。

横隔膜は常に呼吸で使われ続ける、非常に疲労しにくい筋肉です。

しかし慢性腰痛患者においては、横隔膜が通常よりも疲れやすい状態にあることが明らかになっています。

Janssensら(2013年)は再発性腰痛を持つ人は、腰痛のない人と比べて横隔膜が疲労しやすいと報告しています。

この「横隔膜が疲れやすい」ということは腰痛に対して悪循環をもたらします。

横隔膜が疲弊すると腹圧を維持する能力が落ち、姿勢のコントロールに割けるリソースが減ります。

すると腰の安定性がさらに低下し、腰への負荷が増える。

それがまた疲労を加速させる…こうした負のスパイラルに陥るのです。

さらに立った状態での呼吸と姿勢の関係を調査したGrimstone & Hodges(2003年)の研究では、再発性腰痛を持つ人は健常者と比較して、呼吸のさいに重心がブレやすく、逆に股関節の動きは低下している傾向にあると言われています。

姿勢的代償反応とは健常者では呼吸のたびに腰椎と股関節で微細な姿勢調整が行われていますが、腰痛患者ではこの調整が不十分である可能性があります。

そのため呼吸によって生じる体幹への揺らぎをうまく吸収できないと考えられています。

一日に呼吸する回数はおよそ2万回前後です。そのたびに横隔膜が不完全な動きをし、体幹の安定化が不十分になるとすれば、積み重なるダメージは決して小さくありません。

腰痛患者における呼吸パターンの変化も研究されています。

Rousselらの報告では、腰痛患者は健常者と比べて安静呼吸時の呼吸パターンに顕著な差はなかったものの、下肢伸展挙上テストのような動的な課題時に非効率な呼吸パターンを示す者が多かったと述べています。

これは何を意味するかというと、

安静にしている間は問題なく呼吸できているのに、体幹に負荷がかかる動作(物を持ち上げる、階段を上る、スポーツをするなど)になると呼吸の質が低下し、体幹の安定性も崩れやすくなる。

つまり「動作中に腰が守られにくい」状態です。

腰痛は特定の動作時に悪化するという訴えが多いですが、この呼吸パターンが一因になっている可能性があります。

前述のように横隔膜は呼吸と体幹安定化の二役を担っているため、呼吸需要が増えると(運動時・緊張時・ストレス時)、姿勢のコントロールに使えるリソースが減少し、腰部への負荷が集中しやすくなるのです。

呼吸と腰痛の悪循環メカニズム図解

これまでの内容を整理すると、次のような悪循環が見えてきます。

まず何らかの原因(姿勢不良・ストレス・運動不足・腰痛そのもの)によって横隔膜の機能が低下します。

横隔膜が十分に働かないと、代償として首や肩の呼吸補助筋が必要以上に働き、胸式呼吸が固定化されます。

胸式呼吸が続くと胸郭の可動性が低下し、体幹の動きが腰椎に集中しやすくなります。

腹圧が不十分なまま維持されるため、腰椎の安定性が弱まり、腰に繰り返しのストレスがかかり続ける。

この一連の流れが慢性的な腰痛を生む土台となっています。

さらにこの悪循環には「腰痛であること」が入り込んでいます。

腰が痛いと、人は無意識に体幹を固め、呼吸を浅くして痛みを回避しようとします。

するとさらに横隔膜の動きが悪化し、胸郭の可動性も落ちる。

痛みが呼吸を悪化させ、悪化した呼吸がさらに痛みを助長する。

これが「慢性化」の鍵の一つです。

では、呼吸の観点から腰痛を改善するためにはどのような考え方が必要でしょうか。

まず基本となるのは「横隔膜を正しく使う呼吸の再学習」です。

吸気時にお腹がふくらみ、胸郭が均等に広がる腹式呼吸を意識的に練習することが、体幹の安定性を高めることにつながると考えられています。

またカラダを動かす際に必要な体幹を安定させる方法「ブレーシング」についての考え方はこちらのブログもご覧ください!

腰が落ち着いている時にやっておきたい!腰痛に効くトレーニングとは?

urokoBodyCare|上野で腰痛・肩こりで整体をお探しの方はurokoへ

次に「胸郭の可動性を回復させる」ことも重要です。

胸椎の回旋・伸展ストレッチや、肋骨の動きを促すエクササイズを取り入れることで、呼吸の質が改善し、腰への負荷を減らすことができます。

胸郭が動くようになれば、体幹の捻り動作や前後屈を胸椎でも担えるようになり、腰椎への負荷が軽減されます。

なお、腰痛の原因は多岐にわたり、呼吸機能だけがすべてではありません。

筋膜・関節・椎間板・神経根障害・心理社会的要因なども腰痛に深く関与しています。

症状が強い場合や長引く場合は、医師などの専門家に相談することが先決です。

腰痛と呼吸の関係は、決して「遠い話」ではありません。

横隔膜は呼吸の主役であると同時に、腰椎安定化に非常に関係のある部分です。

胸郭の可動性が失われれば、腰にしわ寄せが来る。

呼吸筋が疲弊すれば、体幹を守る力が衰える。

浅い呼吸が続けば、動作のたびに腰が無防備な状態に置かれる。

これらは臨床研究が積み重ねてきた事実です。

「腰が痛いのに呼吸?」と思った方こそ、一度自分の呼吸に意識を向けてみてください。

吸ったときにお腹が動いているか、胸郭が均等に広がっているか、肩が上がっていないか。

その観察が、長年悩まされてきた腰痛改善への、大切な入り口になるかもしれません。

呼吸と腰痛のことでのご相談や実際に施術を受けてみたいという方は上野・稲荷町のurokoBodyCareにご相談ください。

その他の筋膜や関節などの腰痛の原因と合わせてあなたの腰痛の原因がどこにあるのかを共に探していきましょう。

なぜ「呼吸」を変えるだけで腰痛が楽になるのですか?

腰椎は部分的に「横隔膜」という呼吸の際に重要な筋肉とつながっています。

横隔膜の動きが悪くなると呼吸が浅くなり、連動して腰周りの筋肉も緊張しやすくなります。

深い呼吸で横隔膜をしっかり動かすことで、内側から腰を支える力が戻り、痛みの緩和につながります。

腰痛がある人は、どのような呼吸になっていることが多いですか?

多くの場合、「胸だけの浅い呼吸」になっています。

ストレスやデスクワークが続くと、お腹を動かさずに肩や首で呼吸をする癖がつきます。

これが「反り腰」を助長したり、腰周りのインナーマッスル(横隔膜や腹横筋など)の筋力低下や機能低下を招き、慢性的な腰痛を引き起こしやすくなります。

腹式呼吸と胸式呼吸、どちらが腰痛に良いのでしょうか?

基本的には「腹式呼吸」が推奨されますが現在では「ブレーシング」と言う体幹を支える筋肉を働かせる呼吸法が重要と言われています。

お腹を膨らませるように息を吸うことで、天然のコルセットと呼ばれる「腹圧」が高まり、腰椎が安定します。

ただし、単にお腹を膨らませるだけでなく、背中側まで広げるようなイメージを持つことが重要です。

1日の中で、いつ呼吸を意識するのが効果的ですか?

特に「起床時」と「就寝前」がおすすめです。

朝はこわばった身体をリセットするために、夜は副交感神経を優位にして筋肉の緊張を解くために行います。

また、仕事中に腰の重さを感じたタイミングで、3回ほど深く深呼吸をすることも有効です。

ぎっくり腰手前の方の施術の事例について解説しています。

urokoBodyCareでの施術内容が気になる方はこちらをご覧ください。


朝方だけ腰が痛くなる方へおススメの記事です。

なぜ朝だけ腰が痛くなるのかについて、論文のデータを元に解説しています。

「朝だけ腰が痛い」はカラダのSOSかも。科学が解き明かす、朝の腰痛のしくみ

urokoBodyCare|上野で腰痛・肩こりで整体をお探しの方はurokoへ

参考文献(主要なもの)

  • Hodges, P.W. et al. Contraction of the human diaphragm during rapid postural adjustments. J. Physiol. 505(Pt 2), 539–548 (1997).
  • Hodges, P.W. & Gandevia, S.C. Changes in intra-abdominal pressure during postural and respiratory activation of the human diaphragm. J. Appl. Physiol. 89, 967–976 (2000).
  • Kolar, P. et al. Postural function of the diaphragm in persons with and without chronic low back pain. J. Orthop. Sports Phys. Ther. 42, 352–362 (2012).
  • Janssens, L. et al. Greater diaphragm fatigability in individuals with recurrent low back pain. Respir. Physiol. Neurobiol. 188(2), 119–123 (2013).
  • Grimstone, S.K. & Hodges, P.W. Impaired postural compensation for respiration in people with recurrent low back pain. Exp. Brain Res. 151, 218–224 (2003).
  • Scientific Reports. Diaphragm excursion and thickness in patients with chronic low back pain with and without lumbar instability (2025).
  • 立命館大学大学院修士学位論文「慢性腰痛者における異なる姿勢での横隔膜機能と呼吸パターンの特徴」(2021).
  • 日本アスレティックトレーニング学会誌「呼吸機能と体幹,横隔膜の関係性について」第5巻第1号(2019).

この記事を書いた人

魚住 享平
魚住 享平urokoBodyCare院長
<資格>
柔道整復師(施術歴18年)

これまで培ってきた技術や解剖学に基づき施術を行っております。
クライアントのお話を伺うことも大好きなので身体のお悩みだけでなく、そのほかのお話も聞かせてください。

<出身> 富山県
<生年月日> 1988年6月30日
<血液型> O型
<趣味> ゴルフ、街歩き、お酒を飲むこと(ハイボール)、野球観戦

最近は仕事のあとに稲荷町・上野・浅草エリアを街歩きをして新しい飲み屋さんや行きたい場所を見つけることにハマっています